エルサレムポストに掲載されたイスラエル・ネタニヤフ首相の米国議会でのスピーチを以下に抄訳します。
「我々がイランと戦うとき、我々は米国の最も過激で残忍な敵と戦っているのだ」とネタニヤフ首相は語った。
「イスラエルと平和を保っている国、またイスラエルと和平を結ぶ予定の国はすべて、イランに対する軍事同盟に参加しなければならない」
「4月にユダヤ国家に対するイランからのミサイルとドローン攻撃を空中で撃墜したとき、我々は五つの軍が同盟している確証を得た。この新しい同盟は画期的なアブラハム合意の自然な延長であり、アブラハム同盟と呼ばれるべきだ」
ネタニヤフ氏はこの同盟を「北大西洋条約機構(NATO)の中東版だ」とほのめかした。
「第二次世界大戦後、アメリカは増大するソ連の脅威に対抗するため、ヨーロッパで安全保障同盟を結成した。同様に、アメリカとイスラエルは今日、増大するイランの脅威に対抗するため、中東で安全保障同盟を結成できる」
ネタニヤフ首相は、4月の防衛計画の立案者としてのジョー・バイデン米大統領の役割に感謝し、アブラハム合意の仲介役を務めたドナルド・トランプ前米大統領にも感謝の意を表した。
「イスラエルは常にアメリカにとって欠かせない同盟国であり続ける。両国が協力することで、特にイランという悪の枢軸に敵対することで、専制政治から民主主義を守っている。今日ここに来たのは、アメリカに『支援と連帯』、そして『我々が困難な時にイスラエルを支持してくれたこと』に感謝を述べるためだ」
演説をボイコットした民主党議員数十人が欠席したにもかかわらず、ネタニヤフ首相は下院議場で温かく迎えられ、55分間の演説は拍手で約80回中断され、そのほとんどはスタンディングオベーションだった。
「イランはアメリカを最大の敵とみなしている」
イランは1979年に政権を握って以来、米国人を人質に取ったり、軍人を殺害したり、大使館を爆撃したりするなど、ワシントンと戦ってきたと説明した。
「彼らは元国務長官と元国家安全保障顧問を殺害するために暗殺部隊をここへ送り込んだ。そして最近わかったことだが、彼らは大胆にもトランプ前大統領を暗殺すると脅してきた」
「イランはアメリカを征服するにはまず中東を征服しなければならないことを理解している。イランの前に立ちはだかるのは誇り高き親米民主主義国家、わが国イスラエルだ」
悪の枢軸
「イランと戦うとき、我々は米国の最も過激で残忍な敵と戦っている。イスラエルがその戦いに参加し、イランの核開発を阻止するために努力するとき、我々は自国を守るだけでなく、あなた方を守ることになる」
「我々の敵はあなた方の敵であり、我々の戦いはあなた方の戦いであり、我々の勝利はあなた方の勝利となる」とネタニヤフ首相は大きな拍手の中述べた。
聴衆の一人が「はい、そうです」と叫んだ。
「イスラエルがハマスを打ち負かせばテロの枢軸に強烈な打撃を与えることになるため、その勝利は目前だ」
首相は、イランの代理組織、ガザ地区のハマス、レバノンのヒズボラ、レバノンのフーシ派に対するイスラエル国防軍の多方面にわたる戦闘に言及し、今月初め、フーシ派がテルアビブに武装ドローンを送り込み、米国大使館近くで爆発を引き起こしたことに触れた。
「イスラエルが米国にとって重要な防衛的役割を果たしているように、米国が我々を支えてくれることを私は知っている」
両国を守るのに役立つ共同防衛・諜報協力に言及した。
そして「我々は中東で米国軍を地上に派遣しないよう支援し、米国民を守ります。米国の支援に深く感謝しています」と加えた。
米イスラエル関係
ネタニヤフ首相は、イスラエルがハマスを壊滅させ、ガザ戦争を終わらせ、中東でのより広範な戦争を防ぐのを支援するため、米国に軍事援助を迅速におこなうよう訴えた。
議会ビルの外では、反イスラエル派と親パレスチナ派の抗議者がネタニヤフ首相に抗議した。ユダヤ系アメリカ人団体Jストリートによると、民主党議員263人のうち68人が演説をボイコットした。ケンタッキー州選出の共和党下院議員トーマス・マシー氏も抗議のため演説を欠席した。
立ち見ができないないほどの議場内では、支持がはっきりと感じられた。ネタニヤフ首相の演説は、彼が部屋に入った瞬間から支持され、演説中ずっと拍手が鳴り響き、何度も会場が沸いた。
ネタニヤフ首相は議会に対し、自分たちは「歴史の岐路」に立ち会っていると語った。
ネタニヤフ首相が「文明の力が勝利するためには、アメリカとイスラエルが団結しなければならない」と述べたとき、議員らは立ち上がって拍手喝采した。ネタニヤフ首相が「我々が団結すれば、重要なことが起こり、我々は勝ち、彼らは負ける」と強調すると、議員らは再び椅子から立ち上がった。
そして「我々は勝つ」と、再びスタンディングオベーションで付け加えた。
ネタニヤフ首相は、1,200人以上が殺害され、さらに251人が人質に取られた10月7日のハマス主導の侵攻に言及した。
彼は襲撃の残虐性について述べ、ギャラリーにいた人質とその家族、その中には父親とネタニヤフ首相の妻サラの間に座っていた救出された人質ノア・アルガマニ氏も含まれていた。
「彼らの愛する人たちが全員家に帰るまで私は休まない」
「我々は今、彼らの解放を確保するために集中的な取り組みを積極的に行っており、これらの取り組みが成功すると確信している。その一部は現在も行われている」
そして、戦争開始以来のジョー・バイデン米大統領の揺るぎない支援に感謝し、10月の訪問は「決して忘れられない」と述べた。
「イスラエルとの半世紀にわたる友好関係と、誇り高きアイルランド系アメリカ人シオニストであることに対して、彼に感謝したい」とネタニヤフ首相は述べた。
また、イスラム教徒やベドウィンを含むイスラエル国防軍兵士たちにも感謝の意を表した。その中には、ネタニヤフ首相とともに議会に赴き、10月7日のハマスとの闘いで勇敢な行動を見せたアシュラフ・アル・バヒリオフ曹長も含まれている。
ユダヤ人迫害
ネタニヤフ首相は、迫害の長い歴史を指摘し、「ユダヤ人はもはや敵の前で無力ではない」と述べた。
過去9か月間にイスラエルの南部と北部戦線で戦死したイスラエル国防軍兵士の遺族に対し、首相は「皆さんの愛する人たちの犠牲が無駄にならないことを誓います」と述べた。
「二度と繰り返さないという約束は決して空約束であってはなりません。それは常に神聖な誓いであり続けなければなりません。そして10月7日以降、二度と繰り返さないという約束は今や現実です」
「イスラエルの敵を倒すには勇気と明晰さ、そして善と悪の違いを知ることが必要だ。ますます多くの反イスラエル抗議者が悪の側に立っており、ハマスや強姦犯、殺人犯の側に立っている。彼らは恥じるべきだ」
「イスラエルは最近、イランが米国での反イスラエル抗議活動に資金を提供し、促進し、米国の公共生活を混乱させていることを知った」
その発言に対して、ギャラリーの誰かが「イエス」と叫んだ。他の人たちは「USA、USA!」と叫んだ。
「抗議者たちに伝えたいことがあります。同性愛者をクレーンで吊るし、髪を覆っていない女性を殺害するテヘランの暴君たちがあなたたちを称賛し、宣伝し、資金提供しているのだから、あなたたちは正式にイランにとって便利な愚か者になったのです。抗議者の中には『ゲイをガザに』と書かれたプラカードを掲げている人もいます。『チキンをKFCに』と書かれたプラカードを掲げているのと同じです」
「抗議者は『川から海へ』と叫んでいますが、どの川やどの海のことを言っているのか、ほとんどわかっていません。地理だけでなく歴史でも不合格なのです」
「彼らはイスラエルがアブラハム、イサク、ヤコブの地であることを全く理解せずに、イスラエルを植民地国家だと非難している」
そして「イスラエルは4000年もの間ユダヤ人の地であった」と説明し、「ここは常に我々の故郷であり、これからも常に我々の故郷である」と強調した。
問題は抗議者だけにあるのではなく、自身の母校であるMITを含む国内トップクラスのエリート校の学長らがユダヤ人虐殺の呼びかけを非難できなかったことにも問題がある。何世紀にもわたってユダヤ人に対して歴史的に向けられた大量迫害、そして最終的にはホロコーストにつながった悪意ある嘘が、今やユダヤ国家に対して向けられている。反ユダヤ主義の惨劇を目にしたときはいつでも、どこであれ、我々はそれをはっきりと非難し、例外なく断固として戦わなければならない」とネタニヤフ首相は述べた。
「これには、国際裁判所がイスラエルに対して不条理な告発をしたことも含まれる」
この言葉は、イスラエルがガザで大量虐殺を犯しているという告発に関する国際司法裁判所の司法審問と、イスラエルが国際刑事裁判所(ICC)で戦争犯罪の告発を受ける可能性があることに言及したものだ。
「私は皆さんに保証したい。どんな圧力がかかっても、10月7日のような攻撃がイスラエルに対して再び起こることを決して許さない」
ネタニヤフ首相は、大多数のアメリカ人はイスラエルに対する「とんでもない」嘘に騙されてはいないと述べた。騙されている少数派は、イスラエル国防軍の民間人保護の取り組みを称賛するべきだし、イスラエルが国際法の要求を超えた措置を講じてきたことを説明した市街戦専門家ジョン・スペンサー氏の話に耳を傾けるべきだと言う。
「イスラエル国防軍のガザでの軍事作戦は、戦闘員と民間人の死者数が最も少ない戦争の一つであり、ラファでは最も低い」
ICC(国際刑事裁判所)
ICCにとって大事なのは、イスラエルの自衛権を剥奪することだとネタニヤフ氏は述べた。
「ICCはイスラエルの手を縛り、自衛を妨げようとしている。もしそうであれば、ICCは米国や他の民主主義国に対しても同じことをするだろう。ユダヤ国家の手が縛られることは決してない。イスラエルは常に自衛する」
ネタニヤフ首相は、ハマスが敗北するか人質が解放される前にイスラエルはガザでの戦争を終わらせなければならないという米国内および国際舞台での呼びかけに反論した。
「イスラエルは、ハマスの軍事力とガザでの支配を破壊し、人質全員を帰国させるまで戦う。完全な勝利とはそういうものであり、それ以下では満足しない」と強調した。
ガザでハマスが負けるということは、イスラエル国防軍がガザの治安を完全に掌握し、二度と脅威を与えられないということだと説明した。
「イスラエルは、ガザに移住するなんて望んでない。そこの統治はイスラエルを攻撃しないパレスチナ人によっておこなわれるべきであり、それはそんなに高い要求ではないだろう」
ネタニヤフ首相は、ガザは「非武装化され、過激化が解消されなければならない」と述べた。
ネタニヤフ首相はまた、エルサレムに言及し、この歴史的な聖書の都市はイスラエルの「永遠の首都」であり、「二度と分断されることはない」と強調した。
「イスラエルの首相として、私は皆さんにこれを約束します。どれだけ時間がかかっても、前途がどれだけ困難であっても、イスラエルは譲歩しません。イスラエルは屈しません。我々は我々の国を守ります。我々は国民を守ります。我々は勝利を収めるまで戦います。暴政に対する自由の勝利、死に対する生の勝利、悪に対する善の勝利。それが我々の厳粛な誓いです」
エルサレムポストのオリジナルテキスト