民族浄化か土地所有か

物議を醸しているトランプ氏の言動。また一つ大きなものが。それがガザ住民の域外移住にいて。読売新聞には「ガザ所有構想」と表現されているが、BBCでは「民族浄化」だと穏やかではない。

パレスチナ自治区のアッバス議長は声明を発表し、トランプ氏の案を断固として拒絶。「私たちの人々の権利が侵害されることは許されない」と言った。当然だろう。

トランプ氏の構想によれば、ガザをアメリカが所有しリゾートにするのだそうだ。パレスチナ自治区の人たちが怒るのは当然だ。

アメリカがガザ地区を「引き取る」とトランプ氏が発言、ネタニヤフ氏との会談後 BBC 2025/2/5

パレスチナや国連、「民族浄化」と強く非難 トランプ氏のガザ再建構想 BBC 2025/2/6

以下は現代イスラム研究センター理事長宮田律氏のFBから転載。

米国のトランプ大統領は、「解体現場」のようなガザを米国が引き継ぎ、再開発して「中東のリビエラ」のようなリゾート地にすると述べた。トランプ氏はこの問題を何カ月もかけて綿密に研究してきたと述べた。ガザ地区の住民を、ヨルダンやエジプトに受け入れさせ、米軍を駐留させながら、再開発する考えを示した。占領地住民を強制的に移住させることは、むろん国際法に違反する。米国がこの不動産開発に実際に着手すれば、ハマスも様々な手段を使って妨害することを考え、米軍にも攻撃をしかけることは十分考えられる。

 この新たな「民族浄化」計画は、昨年3月にトランプの娘婿のジャレッド・クシュナーがガザ地区の海岸沿いの土地は非常に価値があるかもしれないと述べ、イスラエルはガザ地区を「浄化」するにあたり民間人を立ち退かせるべきだと提案したことによって始まった。

 クシュナーはホワイトハウスを去った後、資金の大半をサウジアラビア政府の政府系ファンドから得たプライベートエクイティ会社を設立した。彼はその資金数百万ドルを、ガザを含む占領地で使用されている軍事・安全保障装備で中心的な役割を果たしているイスラエルのハイテク企業に投資した。

 クシュナーはガザでの戦争を「少し残念な状況ではあるが、イスラエルの観点に立って、私は住民を避難させ、その後一掃するために最善を尽くす」と述べた。24年5月にイスラエルの「エルサレム・ポスト」紙はネタニヤフ首相の戦後ガザ地区に関する構想「ガザ2035」を発表した。その構想が書かれた文書には「ゼロからの再建」が強調され、この言葉にはネタニヤフ首相のガザに関する目標、つまりガザを徹底的に破壊し、その後に新しい都市をゼロから設計し、立て直すという目標が表れていた。

 トランプが今回発表した構想は、彼の支持基盤であるクリスチャン・シオニズム(福音派)の世界観を進めようとしているようにも見える。クリスチャン・シオニズムは、パレスチナにユダヤ人が集まれば集まるほど、かつてキリストが生きていた時代に近づき、キリスト復活のための条件が整い、復活したキリストは人類に幸福をもたらす千年王国を建設すると考えている。他方、イスラエルの極右である宗教シオニストは、ユダヤ人がパレスチナの地を支配すれば、メシア(救世主)が到来すると考えている。このように、米国のクリスチャン・シオニズムとイスラエルの宗教シオニズムとでは、ユダヤ人のパレスチナ支配を待望するという共通性をもっている。

 パレスチナ人をガザから放逐するという民族浄化計画は、23年10月7日のハマスの奇襲攻撃を受けて新たな段階に入った。モサド(対外諜報・諜報活動と特務工作を担当)とシンベト(イスラエル国内と占領地での治安維持と防諜活動に従事)を統括するイスラエル情報省は秘密の覚書を作成した。この覚書の内容は、1.ガザのハマス政権の打倒、2.必要な政策に応じて、ガザ住民に対する国際的支援のあり方を考える、3.ガザのイデオロギーの変化(脱ナチ化)のために、徹底した政策が必要である、4.ガザからシナイ半島に住民を追放するなどだった。ガザでジェノサイドを行い、住民の放逐を考えるイスラエルこそ「脱ナチ化」が必要であることは言うまでもない。

 2024年1月、イスラエルの極右入植者組織は「ガザへの(ユダヤ人の)帰還会議」を主催した。イスラエル極右の閣僚や国会議員たちが出席し、ガザにおけるのイスラエル入植地の再建と6つの新入植地の追加計画を示す地図が提示された。その会議にはネタニヤフ政権のイタマル・ベングビール国家治安相が踊っている姿が見られた。

 1948年12月に国連総会はパレスチナ難民が故郷に帰る権利(帰還権)を認め、帰還を望まない難民には、土地など彼らが失った財産に対する金銭的な補償が行われるべきであるという決議を採択した。(国連総会決議194Ⅲ)国際法に従えば、ガザ住民たちにはイスラエル領内を含めて、イスラエル建国によって避難を余儀なくされた土地への帰還の権利がある。ガザのリゾート地化を訴えるトランプ大統領はパレスチナ問題の歴史も、国際法も考慮の外らしい。トランプ政権で、米国の国際社会での孤立はいっそう進むだろうが、日本もこの「狂った」ような大統領になって、日米同盟のあり方を根本から見直すよい機会を与えられたと思う。

ガザのデータは歪曲されているというエルサレムポストの主張

イラエルのエルサレムポストは以下のような主張を社説でしている。

ガザからの歪曲されたデータはイスラエルの行動に対する世界の理解を損なう – 社説

概要
今こそハマスの嘘の責任を追及し、この紛争をめぐる物語が捏造ではなく事実に基づいたものであることを保証すべき時だ。

本文
ガザ保健省が発表した死傷者数は、10月7日のハマスの攻撃に対するイスラエル軍の対応開始以来4万4000人以上が死亡したとする数字として広く引用されているが、この数字は大幅に誇張され、誤解を招く恐れがあるとして精査されている。

土曜日に発表されたヘンリー・ジャクソン協会とフィフティ・リサーチ・グループによる調査では、これらの数字が組織的に操作され、紛争の物語を歪曲する一因となっていることが明らかになった。

HJSの報告書は、ハマスが支配するガザ保健省が、自然死、戦闘員の死亡、さらには戦争前の死者さえも含めて数値を水増ししていると非難している。 「ハマスの下で活動している保健省は、民間人と戦闘員の死亡を区別せず、女性と子供の死亡者数を過剰に報告し、さらには紛争が始まる前に死亡した個人も含めることによって、定期的に死者数を水増ししてきた」と報告書は述べている。

さらに、フィフティ・リサーチ・グループ(FRG)は、「戦場での誤った報道:マスメディアはガザ報道でいかにして戦闘員の死傷者を民間人の死者として誤って伝えているか」という研究で、BBC、CNN、ニューヨーク・タイムズを含む世界の主要メディアの記事1,378件を分析した。

その結果、98%がガザ保健省が提供した死傷者数に依拠し、イスラエルや米国の諜報機関のデータに依拠していたのはわずか5%だった。この研究は、「ハマスが管理するデータに圧倒的に依存したことで、イスラエルが民間人を標的にしていると不釣り合いに描写する物語が生まれた」と指摘している。

この調査結果は、ガザでの犠牲者の大半は民間人だという主張にも異議を唱える。ヘンリー・ジャクソン協会が裏付けたイスラエルと米国の諜報データによると、報告された死者のうち約1万7000人がハマス戦闘員だと推定されている。ヘンリー・ジャクソン協会の報告書の主執筆者であるアンドリュー・フォックス氏は、「民間人と戦闘員の犠牲者を区別していないことが、紛争の矢面に立っているのは民間人、特に女性と子供だという見方を助長し、感情やメディア報道に影響を与えている」と説明した。

FRGはまた、主要メディア組織がこうした歪んだ報道を続けていることを批判した。「データは、死傷者数を精査し、双方の情報源を精査していない組織的な失敗を示している」と報告書は述べている。たとえば、ニューヨークタイムズやその他のメディアは、ガザ保健省の数字を文脈に当てはめたり正確性を検証したりすることなく頻繁に引用している。「死傷者報告は国際認識を形成する上で重要な役割を果たしており、誤った報道は危機を深めるだけだ」と調査は指摘している。

広範囲にわたる影響

この操作は広範囲にわたる影響を及ぼしている。英国の影の外務大臣プリティ・パテル氏は、「この紛争中の現地での出来事や事実の操作は、ハマスのようなテロ組織が目的を達成するために真実を歪曲することを証明している」と述べた。同氏はさらに、「メディアはこれに警戒し、情報や出来事を責任を持ってバランスよく報道しなければならない」と付け加えた。

ヘンリー・ジャクソン協会の報告書は、こうした戦術は国際法に違反しているにもかかわらず、イスラエルに対する国際的な非難を誘発するように設計されていると指摘している。

こうした現実にもかかわらず、メディアはハマスが管理するデータに圧倒的に依存しており、「大量虐殺」や「人道に対する罪」の主張など、イスラエルに対する非難を煽っている。同協会の報告書は、「不完全なデータや操作されたデータに基づいて、歪んだ物語が世論や国際政策を形成している」と警告している。

フィフティ・リサーチ・グループの調査結果は、死傷者数にはハマス自身による死者数が含まれていないことが多いことも明らかにしている。例として挙げられているのは、家族のために人道支援物資を集めようとした際にハマスに撃たれたとされる17歳のアハメド・シュダド・ハルミー・ブリカの事件だ。報告書は、こうした事件は主流メディアの報道では日常的に省略されていると指摘している。

エルサレム・ポスト紙は、国際メディアに対し、犠牲者数に関する報道にはより慎重になり、テロ組織が管理するプロパガンダ手段ではなく、信頼できる検証済みのデータから情報を得るよう求めている。報道の誠実さは、紛争のあらゆる側面が正確に伝えられ、複雑な状況をより明確に理解できるようにすることを要求している。

さらに、私たちは政策立案者、ジャーナリスト、そして国民に対し、操作と誤報に基づく物語を拒否するよう強く求めます。真実は重要です。イスラエルの自衛権のためだけでなく、メディアの信頼性と平和の追求のためにも重要です。今こそ、ハマスの嘘の責任を追及し、この紛争を取り巻く物語が捏造ではなく事実に基づいたものであることを保証すべき時です。

テヘランタイムスがネタニヤフのことを書くとこうなる

以下はテヘランタイムスの記事。

ネタニヤフは想像を絶するほど厚かましい

概要
テヘラン – 指名手配中の戦争犯罪人ベンヤミン・ネタニヤフ氏は木曜日のビデオメッセージで、ガザ地区の住民に対する自政権の残虐な戦争を「文明」対「野蛮」の戦争として滑稽に表現しようとした。

本文
「我々は野蛮から文明を守っている」と、イラン国民を欺くことを意図したビデオメッセージの中で彼は語った。

ある人物がこのような発言をしたため、ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)は、ガザ地区での「戦争犯罪および人道に対する罪」で彼に対して逮捕状を発行した。

彼が率いる政権が14か月以上にわたってガザの住民230万人に対して恐ろしく言語に絶する犯罪を犯しているのに、どうして文明について語れるというのか?

ガザにおける彼の軍隊の犯罪の規模は、無差別殺人、集団懲罰、飢餓を通じて全世界に衝撃を与えているが、彼は自分の軍隊の野蛮な行為を文明対野蛮の戦争として見せようとしているのは滑稽だ。言い換えれば、彼は自分自身と彼の占領軍を文明的、犠牲者を野蛮として見せようとしているのだ。

ガザの人々に対する彼の政権の犯罪の程度はあまりにも悲痛で、2月には、アメリカ空軍の現役隊員アーロン・ブッシュネルでさえ、ガザの民間人に対する残虐な戦争へのアメリカの共謀に抗議して、ワシントンD.C.のイスラエル大使館の外で焼身自殺した。

ガザで大量虐殺を行っている人物が文明について語るとはばかげている。要するに、ネタニヤフは想像を絶するほど厚かましく、恥知らずだ。おそらく、歴史上、彼ほど図々しい戦争犯罪者は数人しかいないだろう。

オリジナルテキスト Netanyahu is impudent beyond imagination TEHRAN TIMES 2024.23.25 22:04

韓国の戒厳令はなぜ?

韓国はもちろん、各国の報道や推測をいくら読んでも韓国の戒厳令についてのしっくりする説明はどこにもない。そこで突飛な考えをしてみた。以下は勝手な推測なので事実ではない。

第三次世界大戦が始まりそうだという雰囲気はこのところずっと続いている。ウクライナとロシアの紛争に北朝鮮の参加と欧米の武器供与、イスラエルを中心とした紛争、シリアの内戦にイランの参戦の可能性など。

ざっくりというと、米国、欧州、イスラエル 対 ロシア、北朝鮮、中国、イランのように思える。この背景があって韓国の戒厳令を考えると、こんな空想をしてしまった。

韓国は日本と同じく米軍の影響下にある。いざとなったら米軍から指令が降りて参戦しなければならない。そのきっかけが戒厳令だったのではないか? ただし、ここにはひとひねりがある。韓国のユン大統領は戒厳令を施行しろと命令された予定の日より先にやってしまったのではないか? なぜなら、韓国を戦線に巻き込みたくなかったから。だからすっとぼけてあんな命令を出した。失敗させるためだ。一度失敗したら、二度目に戒厳令を出すのはハードルがかなり上がるだろう。

誰かは知らないが、韓国を巻き込みたかった人々は頭を抱えているのではないか?

この話にはなんの証拠もないですよ。「そんなばかな」という与太話として聞いておいてください。

紛争が沈静化するように祈りましょう。